こんにちは。先日、会社法施行規則案が出ましたね。施行時期は結局51日となるようです(意見募集要項)。

事業報告の内容(同規則第118条)の拡充について、気になった点を少し書いておきたいと思います。今回の案で、事業報告に新たに記載が必要になったものとしては、以下のものがあります。


 内部統制システムの運用状況の概要(同規則第118条第2号)

 特定完全子会社(当該事業年度の末日において、当該株式会社のある完全子会社等の株式の帳簿価額が当該株式会社の当該事業年度に係る貸借対照表の資産の部に計上した額の合計額の5分の1を超える場合における当該完全子会社等)の名称、住所、当該特定完全子会社の株式の当該事業年度の末日における帳簿価格の合計額等(同規則第118条第4号)

 株式会社とその親会社等との間の取引であって、関連当事者との取引に関する注記があるときは、(1)当該取引が株式会社の利益を害さないように留意した事項、(2)当該取引が当該株式会社の利益を害さないかどうかについての当該株式会社の取締役(取締役会設置会社の場合、取締役会)の判断及びその理由、(3) 社外取締役の意見が(2)と異なる場合は、その意見(同規則第118条第5号)

③は親子会社間取引についての記載事項です。③(2)の記載からは、親子会社間取引が、全て取締役会の決議事項であることが前提となっているようにも読めますね。穏当な話をすれば、会社計算規則第112条でいう「重要なもの」のみが取締役会決議があることが前提なのでしょうが。実際上親子会社間の契約なんて世の中にはザラにあると思いますし、皆さん、取締役会の決議事項としているのでしょうか。少数株主がいる場合は、慎重になると思うのですが、完全親子会社間であれば特にしていないのではないかと思います。理論上、100%親子会社間取引は、両者間に利害の対立がないため、利益相反取引(会社法第356条)には該当しないと解釈され取締役会での承認が不要とされています。他方で、利益相反取引には該当しない(ので、利益相反取引の承認としての取締役会は不要)と考えられる親子間取引であっても、取締役会での決議が求められるとするのはちょっと重いのではないかという気がします。

今後の運用上、完全親子会社間なので利益を害していない(親会社の利益になっても、子会社単体の利益に合致しているのかは利益相反とは別の観点のようにも思いますが…)と書けば、事業報告書の①から③の記載として十分である、と解釈されることになるのか、厳密な運用が必要なのか、確認していきたいと思います。
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