三井物産による三井情報の完全子会社化と、ヤフージャパンによるシナジーマーケティングの完全子会社化という2つの完全子会社化のニュースがありました。三井物産の方は、子会社の完全子会社化ですね。三井情報は、三井物産によって58.37%を保有されていますが、東証二部に上場しており、いわゆる親子上場の状態です。そのため、今回の完全子会社化は、親子上場廃止という意味合いもあります。他方、ヤフージャパンの方は資本関係のない会社の完全子会社化です。

上場会社を完全子会社化する場合、公開買付けの後、全部取得条項付種類株式を発行して少数株主をキャッシュアウトする2段階での買収スキームをいずれのDealも採用しております。この2段階スキームは、米国での完全買収スキームを流用したものであり、米国では、1段階で合併する(米国で全部取得条項種類株式のようなものや株式交換がデラウェア州会社法にないため合併を利用します。)よりも公開買付けを最初に行ったほうが当局の審査が通りやすいという実務もあって公開買付け+合併という2段階での完全買収スキームを行う必然性がありますが、日本の場合は、それほど必然性があるわけではないのが実情です。今回は、ヤフージャパンの今回の完全子会社化の場合、株主総会での特別決議(出席株主の株式数の3分の2)が成立するか票読みが不確定ということもあり、公開買付けによって、特別決議が通るのが確実という状況まで買い増す必要があることから公開買付けを第1段階で行うメリットがありますが、三井物産は既に議決権の過半数を制しており、全部取得条項付株式への定款変更についての特別決議はほぼ通るようにも見えますのでそれほど公開買付けを行うメリットは実際はないのかもしれません。ただ、株主総会の前にできる限り株主を減らすことによって、反対株主の株式買取請求が将来行われる可能性をできる限り低くしておくことができるというメリットはあるかもしれませんね。

なお、ヤフージャパンの件ですが、
シナジーマーケティングの第3位株主は楽天なのですが、ヤフージャパンとの間で公開買付けに対する応募契約は締結されていないようですので楽天の対応がちょっと気になりますね。敵対的買収を楽天が仕掛ければかなり本格的な買収合戦になりますね(まあ、公開買付届出書の提出までに応募契約が締結できていない、又はそもそも締結しないが出資額より高かければ経済合理性から応募するけど確約しないなどといった温度感の場合も多いので今回もそういうことなのかもしれません。)。

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 なんとなくモン・サン・ミッシェル